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第59回 税理士試験 法人税法 【第一問】 問3 [税理士試験と実務の接点]

第59回 税理士試験 法人税法 【第一問】 問3 解答のためのPISA

問3
建設業を営むC社は、いわゆるPFI(Private Finance Initiative)事業《参考2の法令参照》として、公営宿舎を建設・所有し、次の内容の契約により、当該宿舎をZ県に賃貸するとともに、その維持管理業務をZ県から受託している。この場合のC社における法人税法上の取扱いを簡潔に説明しなさい。

〔契約の内容〕
①C社は平成2l年4月1日に当該宿舎をZ県に引き渡し、同日から25年間にわたって賃貸する。
②Z県はC社に対して年2回、25年間にわたって賃借料を支払う。なお、賃借料は、C社において負担した当該宿舎の工事費用及び付随費用の合計額をZ県が支払うこととなるように積算されている。
③契約期間中に契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、賃貸借契約を終了する。その場合、Z県は契約期間のうち未経過分の賃借料の合計額をC社に支払い、当該宿舎の所有権を取得する。
④Z県はC社に対し、当該宿舎の賃借料とは別に、毎月末、維持管理業務に係る手数料を支払う。
⑤C社は管理業務として当該宿舎の入居者から毎月25日に家賃を徴収し、同月末にその合計額をZ県の口座に振り込む。       .
《参考2》
○民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 第2条第2項(定義)
この法律において「特定事業」とは、公共施設等の整備等(公共施設等の建設、改修、維持管理若しくは運営又はこれらに関する企画をいい、国民に対するサービスの提供を含む。以下同じ。)に関する事業(市街地再開発事業、土地区画整理事業その他の市街地開発事業を含む。)であって、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるものをいう。

問3
今度は、契約書の内容をチェックし、適正な課税判断ができるか否かのスキルを問われた問題です。
契約書を読む(作る)ことは、実務の上でとても大切なスキルであって、これができなければ、法人税をどうあてがうかもままならないのです。

もっと言えば、今回の契約書を読み取れば、そこに記載されている内容は、
「賃貸借(リース)契約」になります。
その上で、法人税法上をあてがうことになります。(実際には、会計上のリース判断も必要ですが・・・・。)
法64の2①(リース取引に係る所得の金額の計算)が機能できるか
法64の2③の判断ができるか否かです。

※参考
法64の2①(リース取引に係る所得の金額の計算)
法人が平成20年4月1日以後に締結する契約に係る賃貸借(リース)取引のうち一定のもの(以下「法人税法上のリース取引」といいます。)については、その取引の目的となる資産(以下「リース資産」といいます。)の賃貸人から賃借人への引渡し(以下「リース譲渡」といいます。)の時にそのリース資産の売買があったものとされます。

※法人税法上のリース取引(法64の2③)
法人税法上のリース取引とは、資産の賃貸借(次の2に掲げるものを除きます。)のうち、次の要件のすべてを満たすものをいいます。
(1) リース期間中の中途解約が禁止されているものであること又は賃借人が中途解約する場合には未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として90%以上)を支払うこととされているものなどであること。
(2) 賃借人がリース資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること。
なお、リース期間(契約の解除をすることができないものとされている期間に限ります。)において賃借人が支払うリース料の額の合計額がその資産の取得のために通常要する価額のおおむね90%相当額を超える場合には、リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであることに該当します。

上記規定を、契約書を踏まえ、具体的な事例にあてがうことができるか否かの論点です。


民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律とありますが、
民間にお金をとりあえず捻出してもらい、公共施設を創出していくための法律なのでしょうね。
(公共サービスの提供に際して施設が必要な場合に、行政が民間企業及びその資金を利用して施設整備と公共サービスの提供をゆだねる手法です。このことが、PFIです。)

参考までに、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 第1条(目的)に、 
この法律は、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の整備等の促進を図るための措置を講ずること等により、効率的かつ効果的に社会資本を整備するとともに、国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保し、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
と書かれています。

このスキームは、実際は、国税庁のホームページに、質疑応答事例に上がっています。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/26/03.htm

質疑応答は、法人税法を具体化するために最良ツールです。
単なる暗記では、意味はありませんが、具体化しながら、簡単に、より簡単に考えられる思考です。
※実際の実務では、ここまでドンピシャのものが、国税庁にアップされているわけではありません。複合判断で、どのように対応していくのかを、検討していくのかが、税理士の実務なのです。

何より
契約書を読めること、
他法令がでてきても抵抗をしめさない力をつけていく必要があります。

参考までに、
問2とのからみかもしれませんが、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 第20条に
(担保不動産の活用等)
第20条  
選定事業者が選定事業を実施する際に不動産を取得した場合であって当該不動産が担保に供されていた場合において、当該不動産に担保権を有していた会社、当該不動産を担保として供していた会社又は当該不動産に所有権を有していた会社に損失が生じたときは、当該会社は、当該損失に相当する額を、当該事業年度の決算期において、貸借対照表の資産の部に計上し、繰延資産として整理することができる。この場合には、当該決算期から十年以内に、毎決算期に均等額以上の償却をしなければならない。

という規定があります。
会社法類似繰延資産なので、任意償却ではありますが。


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